客先レビューのフロー — 何をいつ提示し、何を合意するか

要求から検収までの客先レビューを6段のフローとして定める。各段で「提示するもの」「客先に求める判断」「完了条件」を固定し、どの段でも判断の対象を混ぜない。文書の層(要求・要件・仕様・設計)と文書単位(「要件定義書は業務領域単位で書く」)を前提とする。

フロー全体

段フェーズ提示するもの客先に求める判断完了条件
0要求検証面談要求資料5点の仮説版(「要求フェーズの作成資料と情報項目」)仮説の訂正、エピソードによる裏取り、優先度と成功基準の決定要求一覧が合意事項化(発言者記録済み)
1全体要件レビュー全体要件(目的範囲・利用者・領域一覧・共通用語・共通ルール・非機能)枠組みの合意: 領域分割の過不足、用語、共通ルール、非機能水準領域分割の確定、全体分の要確認回答
2領域要件レビュー(領域ごと)領域別要件+該当する要確認事項ユースケースの過不足 / 業務ルールの数値・条件 / 管理する情報 / スコープ外の落ち領域の要確認消し込み、版確定
3プロトタイプレビューFigma・モック(非契約と明言)操作の流れと構成プロトタイプ承認(=フロー承認)
4仕様確認(必要箇所のみ)画面仕様書のうち確認依頼箇所のみ(文言・帳票・業務に触れる挙動)依頼箇所のみの可否依頼箇所の回答
5受入テスト・検収受入基準(確認結果・確認日の記入欄付き)基準ごとの合否全基準の合格

運びのルール(全段共通)

順序の規律

段3の合意範囲 — 「非契約と明言」の意味

プロトタイプは契約上の納品物・合意物ではないと客先に明示する。明示しない成果物は、見た人の中で最も強い身分(=約束された完成形)に勝手に昇格し、画面が契約物化する。要件定義書から画面を追い出した意味が、プロトタイプ経由で無効化される。

段3で合意するもの・しないもの:

合意する合意しない
操作の流れと構成(この手順で業務が回るか)ピクセル単位の見た目・色・文言の最終形
画面をまたぐ業務フローの成立ダミーデータ・未検討部分の細部

明言の3点セット:

  1. プロトタイプ冒頭に一文: 「本プロトタイプは操作の流れを確認いただくためのもので、最終的な画面デザインを保証するものではありません。細部は実装時に変更されることがあります」
  2. 議事録に「本承認は操作フローの承認であり、画面詳細の確定ではない」と記録する
  3. 契約・提案書のゲート定義にも同じ定義で書く(段3 = フロー承認)

段3は契約上のゲートとして提案書・WBSに位置づける。これがないと操作フローの合意タイミングが宙に浮く。

段3以降の変更 — 再承認の判定

判定基準は一つ: 承認の対象(操作の流れと構成)が変わったか。 実現部品の変更は承認対象の外である。

変更の例再承認理由
別画面遷移→モーダル、タブ→アコーディオン不要器の変更。手順は不変
ボタン位置・文言・色の変更不要見た目(そもそも合意対象外)
削除時の確認ダイアログ追加不要手順は増えるが、要件(削除は確認を経る)の実現。要件側が根拠
自由順の入力 → 順序固定のウィザード必要合意済みの流れの性質(順序を問わない)が変わる
保存と公開の操作を1ボタンに統合必要業務上別の判断が1操作になり、誤操作の意味が変わる
一括操作の廃止・分割必要業務の作業単位が変わる
途中保存の廃止再承認ではなく要件改訂要件(中断再開可)に抵触。仕様の裁量の外

パターンは3つ。①手順の構造が変わる(順序の固定/解除、ステップの統合・分割) ②業務上の判断の単位が変わる ③要件の達成条件・例外に触れる(→要件改訂の手続きへ)。どれにも触れない変更は受注側の裁量である。

承認と報告の2レーン

グレーな変更(例: モーダル化により一覧を見ながらの編集ができなくなる)のために、承認(事前・ブロッキング)とは別に報告(事後・非ブロッキング)のレーンを持つ。

まとめ

この承認は何への承認か。 承認を取るとき・求められたとき、対象が一文で言えないなら、その承認は後で必ず拡大解釈される。